はじめに
「東南アジア逐次刊行物データベース」プロジェクトでは、2013年に『東南アジア逐次刊行物の現在:収集・活用のためのガイドブック』を刊行し、2022年に同書のデジタル版を京都大学学術情報リポジトリKURENAIで公開しました。初版(第1編)から10年を経過し、この間に、東南アジア逐次刊行物の出版状況も大きく変化してきたことから、この度、大幅に内容を改訂した第2篇を刊行することに致しました。
今回企画する第2編では、この10年間で東南アジア逐次刊行物の出版状況について何が変わったのか?を中心として、以下の点に焦点を当てていきます。
- スマホに代表されるガジェットデバイス(携帯型情報端末)とLINE・Facebookのようなソーシャルメディアの普及という情報インフラ等にかかる社会の劇的な変化→出版媒体が既存の出版団体から個人によるSNS発信へ変化し、世界規模・タイムラグなく情報が普及するようになった。
- 2020年以降のCOVID19によるパンデミックがもたらす大きな影響が、東南アジアだけでなく世界全体に及ぶ→モノ・ヒトの移動が停滞し、従来の紙媒体出版に退潮傾向が見られる。
- 東南アジア諸国の中における体制転換→外部からのアクセシビリティが後退。
これらの変化を受けて、第1編では、紙媒体の逐次刊行物情報主体となっていましたが、今回刊行する第2編では、SNSによる発信、からの発信、デジタル媒体の逐次刊行物の普及、に焦点を当てていきます。
また、この10年に研究を開始された若手研究者の方や、ジャーナリスト、現地在住の邦人の方々、様々な分野で活躍されている方にお声がけし、多彩な執筆陣のもとに逐次刊行物の情報を通して、新たな東南アジア社会の現在を、伝えることができればと思っております。
企画編集:木谷公哉・神谷俊郎・小林磨理恵
(「東南アジア大陸部少数民族は言語文化アイデンティティをどのように維持発信しているか」(科研基盤(C) 研究代表:木谷公哉))
以下、執筆者の所属は執筆当時の所属機関を記載しています。
目次(各論考についてDOIを付与)
- まえがき
- 第1章:東南アジア逐次刊行物DBの分析
- 東南アジア逐次刊行物データベースの紹介(木谷、神谷)
- DB収録資料データの分析(木谷、神谷、矢野、小林、大野)
- 第2章:東南アジア各国の逐次刊行物出版事情
- インドネシア (Indonesia) :土佐美菜実:「インドネシアの逐次刊行物におけるデジタル化 – 情報収取ツールの変化 –」
- カンボジア (Cambodia):新谷春乃:「カンボジアの新聞・雑誌 – オンラインニュースの興隆と独立系メディアの危機」
- ラオス (Laos):山田紀彦:「ラオスの出版事情とその変化」
- ミャンマー (Myanmar):石川和雅:「ミャンマーの出版業界の10年間(2012~2022)- そしてこれからの10年間」
- タイ (Thailand),:小林磨理恵:「タイの雑誌・新聞とその変化」
- ベトナム (Vietnam):大野美紀子:「ベトナム国内における新聞の発行状況と新聞メディアの特徴」
- フィリピン (Philippines):山下惠理:「フィリピンの逐次刊行物における出版状況の変化」
- 第3章:逐次刊行物を中心とする大陸部少数民族による情報発信
- モン(Hmong):吉井千周:「タイ・モン族(HMONG)・モン語」
- モン(Mon):和田理寛:「少数民族モンの逐次刊行物(ミャンマーとタイ)- 異榻同夢の文語共同体 –」
- シャン(Shan):菊池泰平:「ミャンマー・シャン州におけるシャン語定期刊行物」
- タイー・ヌン(Tay Nung):平野綾香:「ベトナムの少数民族タイー・ヌン族の情報発信」
- 第4章:東南アジアにおける日本人社会の情報発信
- インドネシア (Indonesia) :水野広祐:「インドネシアの日本語メディア」
- カンボジア (Cambodia):西村清志郎:「カンボジア日本人社会からの情報発信 – カンボジアのフリーペーパーについて」
- ミャンマー (Myanmar):菊池泰平:「ミャンマーにおける日本語フリーペーパー」
- フィリピン (Philippines):
- シンガポール(Singapore):芹澤隆道:「シンガポールの日本語フリーペーパー「ASIA X」」
- タイ(Thailand):
- ベトナム(Vietnam):中安昭人:「ベトナムの情報発信の主役は紙からウェブ、そしてSNSへと変遷した」